あれ!?いつもと味が違う!? 〜最近ストレスを感じていませんか?〜
いつもと味が違う!?味覚が変わった経験はありませんか?普段は酸っぱく感じるクエン酸入りの飲み物が運動後にはあまり酸味が感じず、ゴクゴク飲めたりしていませんか?いつもは苦く感じるビターチョコが仕事中には、苦味はあまり感じず、沢山食べていたりしていませんか?
両方とも私の経験ですが(笑)
味覚は甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の5つが基本味とされています。実は、この味覚がストレスや疲労によって変化すると言われています。今回は、ストレスや疲労によって味覚が変化した研究を2つご紹介します。
ストレス状態における味の感受性
日本官能評価学会誌に掲載された論文です。精神的および肉体的な疲労を与えた後、甘味、酸味、苦味がどう変化するか、またその理由も研究された論文です。
味の最終判断は色々な情報を元に脳が行うため、その時の人の生理状態や心理状態によって味の感じ方が変化すると説明されています。
精神的な疲労後(精神的ストレス状態)の味覚変化
●実験方法
パソコン作業を40分行い、精神的な疲労、いわゆる眼精疲労を誘発。
●結果
緊張感、疲労感が増加し、活力感の低下が認められ明らかに精神的に疲労状態となった。甘味、酸味、苦味すべての味において味の感受性が有意に減少。味強度においては苦味のみ減少。
●味覚が変化した理由
すべての味感受性に変化が生じたのは眼精疲労が生じ大脳レベルで混乱が生じ、味感覚認知に影響を与えたのではないかと予測されています。強度において苦味のみ低下したのは、唾液中のリン脂質が増加したため、苦味抑制作用が働き強度が減少したと示唆されています。
肉体的な疲労後(肉体的ストレス状態)の味覚変化
●実験方法
自転車エルゴメーターを10分行う、運動による疲労を誘発。
●結果
疲労感が増加し、活力感もやや増加傾向。運動によって身体的疲労は感じているが意識は活性化されている状態。酸味のみ感受性の著しい低下が認められた。
●味覚が変化した理由
活力は逆に増加していることから大脳は活性化しており、そのため精神的疲労の時のような感受性低下は認められなかったと示唆されています。酸味の感受性が低下したのは、唾液中の蛋白質含量が増大したため、緩衝能の増大が生じ、酸味の強度が減少したと示唆されています。
すなわち、精神的ストレス状態になると甘味、酸味、苦味の感受性が落ち、特に苦味が感じにくくなり、肉体的ストレス状態になると酸味が感じにくくなるという結果でした!
冒頭でお話した運動後には酸味が感じにくくなり、仕事中(精神的ストレス)には苦味が感じにくくなるのはストレスによる味覚の変化だったことが理解出来ました!
小学生における味覚閾値と疲労やストレスとの関連
日本栄養・食糧学会誌に掲載された研究報告です。小学生男女58名を対象に、疲労やストレスが甘味、塩味、酸味、苦味の味覚閾値にどのように関連するか研究された報告です。
味覚閾値とは、味を感知する最小濃度です。
●実験方法
ストレスは唾液α-アミラーゼ(ストレスで分泌される消化酵素)で測定。疲労は回答方式であるチャルダー疲労スケールにより疲労評価。身体疲労、精神疲労、両方合わせた総合疲労に分けて味覚を測定。
●結果
ストレスでは味覚に変化なし
身体的疲労では酸味の味覚低下
精神的疲労では塩味の味覚低下
総合的疲労では酸味と苦味の味覚低下
上記のストレス測定は急性のストレスに有効であることから、急性のストレスは味覚閾値に影響を及ぼしにくく、慢性疲労は特定の味覚閾値を上昇させる可能性があると示唆されています。
身体的疲労は大人と同じ結果でしたね。ストレスや疲労の測定方法が大人とは違うので結果の比較は出来ませんが、子供も疲労が溜まると味覚が変わるのは事実のようです。
少し余談になりますが、対象者の背景としてストレスや疲労がない状態では、味覚低下者が苦味6.9%、塩味・酸味8.6%、甘味17.2%でした。
味覚閾値が最も高かったのが甘味であり、女子大生を対象とした研究でも同じ結果だったと記載されています。
近頃、子供の味覚低下は問題となっています。味覚低下による偏った嗜好や食習慣は生活習慣病につながる恐れもあります。
幼少期までに培われた味覚が人の一生の味覚傾向を左右するとも言われています。子供の疲労に注意を払うことも重要ですが、幼い頃からの食事(味覚形成)の大切さも改めて痛感しました。
さいごに
普段と食べ物や飲み物の味が違っていたら、ストレスや疲労が溜まっていないか、一度ご自身の生活を振り返ってみて下さい。そして、是非ご自身を労ってあげて下さい!