どうして高血圧になるの!? part1 ー高血圧の原因と予防ー
日本で高血圧の人は約4300万人。
20歳以上の国民の2人に1人は高血圧と言われています。その中で、自分が高血圧と気づいていない人が約1400万人もいると推測されています。
高血圧は、脳卒中(脳出血、脳梗塞、脳血栓)や心疾患(心筋梗塞、狭心症)による死亡の最大の危険因子です。恐ろしいことに、毎年約10万人もの人たちが高血圧を主な原因とする病気で命を落としています。
痛くもかゆくもない高血圧。自覚症状がほとんどないため、気づきにくい病気でもあります。
今回高血圧について、血圧が高くなるメカニズムや高血圧の原因と予防についてお話ししたいと思います。part2まで続きます。
part1では、血圧の基準値と血圧が高くなるメカニズムについてお伝えします。
血圧の基準値
成人の血圧の正常値は、診察室では収縮期血圧(最高血圧)が120㎜Hg未満、拡張期血圧(最低血圧)が80㎜Hg未満されています。
高血圧の診断基準は、診察室では収縮期血圧(最高血圧)が140㎜Hg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が90㎜Hg以上とされています。さらに、3段階に分類されています。
高値血圧・正常高値血圧は、高血圧の一歩手前であり、高血圧予備群として注意が必要です。
(孤立性)収縮期高血圧とは、収縮期血圧だけが高く、動脈硬化が進んだ高齢者に多く見られるようです。
正常値である120/80㎜Hgを少しでも超えると、脳卒中・心疾患などにかかるリスク、またその病気で死亡するリスクが高まることが分かっています。血圧は、正常値以下を維持することが大切です。
成人における血圧値の分類(㎜Hg)
分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | ||
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
正常血圧 | <120 かつ <80 | <115 かつ <75 | ||
正常高値血圧 | 120-129 かつ <80 | 115-124 かつ <75 | ||
高値血圧 | 130-139 かつ/または 80-90 | 125-134 かつ/または 75-84 | ||
Ⅰ度高血圧 | 140-159 かつ/または 90-99 | 135-144 かつ/または 85-89 | ||
Ⅱ度高血圧 | 160-179 かつ/または 100-109 | 145-159 かつ/または 90-99 | ||
Ⅲ度高血圧 | ≧180 かつ/または ≧110 | ≧160 かつ/または ≧100 | ||
(孤立性)収縮期高血圧 | ≧140 かつ <90 | ≧135 かつ <85 |
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット【血圧が高くなるメカニズム】
血圧とは?
私たちの全身を巡っている血液は、つねに心臓から送り出されています。この血液が、血管にかける圧力(血管の負担)が血圧です。
血圧は、血液の量と血液が流れやすい血管かどうかで決まります。
心臓からたくさんの血液が送り出されると、血管にかかる力が大きくなるので血圧は高くなります。また、何らかの原因で血管が狭くなると、血液が流れにくくなり、血圧は高くなります。
血圧は、なぜ高くなるの?
血圧の調整に大きくかかわっているのは、自律神経と腎臓の働きです。
通常では私たちの体は自律神経と腎臓の働きのバランスがとれて、血圧が一定範囲で維持されています。しかし、なんらかの原因で自律神経や腎臓の働きによる血圧を調整するしくみが崩れると、血圧がつねに高い状態が続くようになります。これが、高血圧です。
①自律神経による血圧の上昇
自律神経は、臓器の働きやホルモンの分泌を自動的にコントロールしています。自律神経には、交感神経と副交感神経があります。
交感神経は活動しているときやストレスがあるときに働きます。交感神経が強く働くと、アドレナリンやノルアドレナリンがたくさん分泌されます。アドレナリン・ノルアドレナリン(ホルモン)は、心臓の拍動を増す作用や血管を収縮させる作用があり、血圧を上げます。
副交感神経は、リラックスしているときに働きます。副交感神経が働いているときは、心臓の拍動回数は少なく、血管を収縮する力も弱くなり、血圧は下がります。交感神経と副交感神経のバランスによって、血圧は調整されています。
②腎臓の働きによる血圧上昇 『レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系』
私たちの体には、ナトリウムをため込む機能、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系のしくみがあります。それが亢進すると血圧が上がります。
血液中のナトリウムが少なくなる、交感神経が働きすぎて腎臓を刺激する、腎臓の動脈が狭くなったとき、このしくみが亢進します。
また、内臓脂肪が増えるとアンジオテンシノーゲンの分泌が増え、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系が活発になり、血圧が上がります。
『レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系』では、まず腎臓からレニンという物質が分泌されます。レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変えます。
アンジオテンシンⅠは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の作用でアンジオテンシンⅡに変わります。このアンジオテンシンⅡは、強力な末梢血管収縮作用があり、血圧を上げます。
また、アンジオテンシンⅡはアルドステロンの分泌を促進します。アルドステロンは、ナトリウムの再吸収を促進します。そのため血液量が増え血圧が上がります。
part1はここで終了です。part2では、高血圧の原因と予防についてお伝えします。
ぜひ、part2もご覧ください。